「ノー残業」にポイント 町ぐるみで健康経営

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 月の残業時間をゼロにした従業員に、地元の商店で使えるポイントを支給し始めた企業が盛岡市にある。7店舗を運営する地場の書籍・楽器店「東山堂」だ。仕組みの土台になったのは、地元の商工会議所などが協力して築いた地域ポイント「MORIO―J(モリオジェイ)」。健康経営や働き方改革を、地域活性化の原動力に――。企業と地域のあり方を問う試みが、地方発で始まった。

 

 「1000ポイントもらったらどうしよう。とりあえず、焼き魚のランチを刺し身にしようかな」。東山堂に勤める相馬梨佳さん(29)は入社7年目。8月に、月々の残業を減らせば会社がポイントを支給してくれることになった。試験運用のため支給条件や額は今後見直されるが、当面は残業をゼロにすると1000円に相当する1000ポイントを付与される。

 

 業務を時間内に収めようとする意識は高まった。今日しなければならない仕事と、若干余裕がある明日に回せる仕事。旧来より細かく計画するようになると、それまでの仕事の仕方のムダも見えてきた。

 

 本社で事務をする相馬さんはもともと、繁忙期を除けば目立った残業をすることは多くないと言う。そのため、ポイントはちょっとしたボーナスのようなものだ。だが、店舗で働く人は違う。在庫整理や品出しなどで残業する機会は少なくなく、残業代も支給されている。残業の削減は実入りの減少になるため、人によっては「残業を減らしたくない」動機も生じる。

 

 試験運用の対象は、本社と本店に勤める正社員とパート従業員の計15人。パート従業員に1時間の残業をしてもらうと、時給はおよそ900円になる。1ポイントは1円の支払いに使えるため、1時間の残業ならば、それをなくして1000ポイントを受け取った方が早く帰れて実入りも良くなる計算になる。

 

 会社が従業員に支給するポイントは、盛岡商工会議所が主導して立ち上げた「盛岡Value City」が運営するポイントプログラムのモリオジェイに変えて使える。2年半前に始まり、加盟店は7月末で市内外の飲食店や小売店など約200になった。

 

 東山堂でポイント導入を担当した鹿糠幸康取締役は「商店街で仕事をしている以上、自分の会社や店だけがよくなるということはあり得ない」と話す。地域で働く人が地元でお金を使い、それで地場企業が潤って給与などに還元されていく――。商業者ならば誰もが描く好循環を生み出すことが、この仕組みの狙いだ。

 

 東山堂の取り組みは、盛岡Value Cityが旗振り役になって進めている「健康経営支援プログラム」という事業が下敷きになっている。ウオーキングや禁煙、ダイエット、育児休暇の取得・・・。残業の削減に限らず、健康経営や働き方改革につながる従業員の取り組みに、企業が自由にポイントを付与できる仕組みだ。

 

 盛岡市のデザイン事務所、「クリップ」は従業員のウオーキングにポイントをつけることにした。従業員のスマホにアプリをダウンロードしてもらい、それをもってさえいれば祝日も休日も関係なく1日8000歩を上限に500歩につき1ポイントを付与する。

 

 1カ月フルに歩いても、たまるポイントはせいぜい500円分。多額とは言えないが同社の内村豊社長は「うちの従業員は5人。技能も必要で、同時に2人とかが働けなくなったら回らない。少しでも健康に対する意識を持ってもらいたい」と、ポイント付与の理由を説明する。

 

 同社に勤めるデザイナーの千葉由紀さん(39)は、「毎日歩いた記録がつくので、自然と歩数を気にするようになった」という。以前から体を動かすことが好きで、運動不足は感じていないが「こういう仕組みがあると、会社が気遣ってくれていることはよく分かる」。

 

 東山堂やクリップと同様の仕組みで、従業員のなんらかの「健康活動」にポイントをつける企業は近く10社程度になる見込み。今後、モリオジェイの加盟社を中心に導入を働きかけ「盛岡で働けば、給与の他にポイントが付く」という状況を生み出すのが目標だ。

 

 厚生労働省の2015年の調査によると、岩手県の1人当たりの月間総実労働時間は約156時間で福島県に次いで2番目に長い。さらに2013年の都道府県別の健康寿命では男性が下から7位だった。女性は上から24位と中ほどだったが、岩手県は脳卒中での死亡率も1位。健康な働き方への関心は高まっており、全国健康保険協会(協会けんぽ)が中小企業などに「いわて健康経営宣言」を促すといった取り組みが広がっている。

 

 「よく、経営で大事なのはヒト・モノ・カネというが、過去の日本ではヒトが脇に置かれていたようなところがある」。盛岡商工会議所の谷村邦久会頭はそう指摘する。

 

 人口減や高齢化の激しい地方ほど、働き手としても消費の担い手としても「代わりのヒト」を見つけるのは困難になっている。地域に暮らす人にいかに働いてもらい、地域を振興するのか。「MORIO―JのJは、ジャパンのJ」。谷村会頭の言葉に、人口減に苦しむ日本各地の自治体のモデルになろうとする意気込みがにじむ。(中川雅之)

 
引用元:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO22285160V11C17A0000000/
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